明日は別の日

のんびりと、マイペースでブログを書いて来ましたら、結構長く続いています。元気出して行きまっしょ、というタイトルから、一新するつもりで。

監督万歳と[キッズ、リターン」

http://www.office-kitano.co.jp/banzai/cover.html

 いうまでもなく、北野武の作品で、今年のカンヌ映画祭出品作品。私の興味は、3分間のプレゼンテーション作品にあった。他の監督達と肩を並べて放映される、たった3分間の映画、どんな風に出来ているのだろうか。

 それは地方の映画館、ジュゼッペ、トルナトーレ監督の映画「ニューシネマ、パラダイス」のシシリアにあるシネマパラディソのようでもあり、山田洋次監督に「虹をつかむ男」で使われた,徳島県のオデオン座のようでもある。

 上映中の映画は、北野武が初めて手がけた映画「キッズ、リターン」、映画館の中には、労働者風の男の客が一人座っている。フィルムはすぐに切れ、いらつく男の表情、修復するまで長い間、待たされた様子が、何本ものタバコの吸い殻が床に落ちているのを映すことで表現している。

映写技師は北野武、お客に謝って、再び映像が映しだされる。拳闘のシーンばかり、映画の最後のシーンが出る。

 高校の校庭で自転車に乗った青年二人。人生に挫折した二人、取り返しのつかないような、、、終わってしまった、とつぶやく一人に、もう一人の青年が言う。

「まだ、始まってもいないじゃないか。」 

 スクリーンに煙が、映写室でフィルムが燃えだしている。

映像は映画館の外、 炎天下の焼け付く太陽に中を、作業着の客は、荒涼とした大地に歩いて行く。

北野武が選んだ「キッズ、リターン」、この映画は、私の大好きな作品で、すでに北野武が「花火」で話題になっていても、それほど興味が沸かなかったのに、テレビで、以前に作られた北野作品を上映していた時に、たまたま見たのだが、ものすごい衝撃を受けた。暴力的なシーンは、眼を覆いたくなるような場面もあるが、その暴力を表現することで、逆に、人間の優しさ、弱さを見事に表現している。

 学校の教室に入らないで、校庭の中を自転車に乗ってぐるぐる回っていた、落ちこぼれ高校生の二人が、その後の生活の中で、汚さ、狡さの大人の世界に翻弄され、挫折して、再び、校庭の中を自転車で廻りながら、ボクシングの世界でぼろぼろになって使い物にならなくなった青年に、ヤクザの世界に入って、半殺しの眼にあい、刀で腕を切リ落とされた青年が「まだ、始まってもいないよ。」と明るく、陽気に言う。馬鹿だけれど純粋な行き方をしてきた馬鹿な二人に、湧き出てくる人間の可能性と、いつだって、始まりなのだ、まだ始まってもいないのだ、という未来への希望の予感を感じさせる。北野武は、いつも「この馬鹿野郎、死ね、この野郎」と汚いせりふに、「人間万歳、好きだよ、この野郎、大切にしろよ命を、この野郎」と心をこめて愛情溢れるエールを送っている。北野武作品の中核をなすのは、「笑い」笑っている時には、我を忘れて、人は、おしなべてハッピーだから。この3分間にも、笑いを逃がさない。

 そういうメッセージを、3分間に表現出来たことで、北野武は「良くできたと思う」と自負しているのだろう。