明日は別の日

のんびりと、マイペースでブログを書いて来ましたら、結構長く続いています。元気出して行きまっしょ、というタイトルから、一新するつもりで。

巴里到着

  

 

 

雪舞う関空から、飛行機が12時間後に降り立ったフランクフルトの気温は12度、パリのシャルルドゴール空港には、フランクフルトからわずか45分の飛行時間で、まだ空は明るかった。ダウンがじゃまなくらい暖かく、季節感が薄れる。

 空港のチケット売り場で、3月分のカルトオランジュ(定期券)と、空港からパリまでのカルネ(回数券)と、パリ内で使用するカルネをまとめて買った。クレディリオーネで作ったVISAカードを使って現場で買い物をするのは初めてだ。去年パリに来た時に勧められて作った。それまでは、チェックを書いて、お金を銀行でおろしていたので、不便だったが、カードがあるととても便利だ。ほとんど現金を持たなくても、このカードでどこにでも通用する。そのかわりに年間80ユーロくらいかかる。考えてみれば、それほど買い物するわけではないので、日本のクレジットで、払ったほうがずっと安く付く。

 さて、空港からPER11,12番線と書いた改札を通ったはずだったのに、プラットホームを見下ろすと、4,5番という文字が見えた。これは間違えて入ってしまった、とあわてて、階段を下りかけたら、そこを降りても同じ場所にしかけない。引っ返して、キョロキョロしながらあわてていると、荷物が引っかかって、ズテンと転んでしまった。胸と膝を激しく打って、痛みが治まるまでしばらくひっくり返っていた。着いたとたんにやばいことになった、と思ったら、そう思い出した。前回のパリでも、つまずいて、同じような所を打ち付けたことを。足下を注しないのが、私の欠点だ。不用心、心と体のバランスに欠けている。以前に、自転車がぶつかってきて、鎖骨を折ったのが原因で、右間接の痛みが最近出てきた。医者は、最終的には手術しかないでしょう、と。雨の中で、バスを待つ人の列に転んだり、つまずいて転ぶとういうのが、まるで私の得意技のようになっている。嬉しくない技。

 

ようやくアパートにたどり着いた。近くの近くのスーパーまで足を伸ばす。従姉妹のレストランはどうなってるだろう。夜も営業したいと言ってたから、まだ開いているかな。行ってみると、鉄のドアは閉まっていて、表に植木が沢山置いてある。扉を叩いたが、中は暗い。旅行にでも出ているのだろうと、引っ返しかけると、二階の窓から従姉妹が顔を出した。寝ていたようだった。中に入ると、ギャラリーに、椅子とテーブルがぎっしり詰まっている。すっかりレストランになっている。始めて2年、ようやく軌道に乗ってきたという。それでもまだ、一人で人を雇っていないというから、彼女の働きぶりはいつもながら驚嘆に値する。13ユーロに値上げしても、パリの物価高で普通なのだそう。フランに換算すると80フランになる。昼の定食は、40フラン以下だったから、すごい値上がりになる。日本食ブームで、従姉妹の店は、他の店に比べて安いから、わざわざ来てくれる食通が増えて来たらしい。これからは、益々客が増えて来るので、そうなれば人を雇い任せて、彼女は再び絵を描いて暮らすという。彼女は、働きながら、絵を描いてきた。働いてお金を稼ぎ、絵を描くというパターンを繰り返してきた。今はお金を作るのに専念している。私は、そういう形で、人の心に響く絵が描けるのだろうか、と疑念している。絵が描けたら幸せだと思い、貧しい生活に甘んじる人の、自分の絵画にも自信もなく値もつけられない人と、世間の人並み以上の暮らしを求めて、働く能力の持ち主が、自分の絵画にも、それなりに高い評価をつけ、プロなんだからという絵画と、そのどちらのほうが、人の心に届くのだろうか、と。

 人はパンのみにて生きているのではない、と言われても、そうはいかないのが人間の悲しさ。10年間、仕事をやめて絵画にかけていた頃、彼女は「先は野垂れ死にするわ。」と私に言っていたが、そういうわけには行かなかった。貯蓄が底をつく前に、アトリエを改装し、貸しギャラリーとレストランに作り替えた。半年かけて、出来るところはすべて自分で作業した。私のような怠け者を見ると、彼女はいやみをいわなければ気がすまなくなるというのも、今では理解できる。昔、パリに来ると彼女のアパートでお世話になった。 私には、多大の貸しがある、と言われて以来、彼女への気持ちが変わってしまった。パリでの暮らすのは厳しい。貸し借りの関係でしか、つきあえないのかもしれない。日本は、島国なので、鎖国的だから、西洋にように「人を見たら泥棒と思え。」と思う人はほとんどいない。無防備だ。最近はそうもいかなくなってきたけれど、「人を見たら善人だと思う。」の方だと思う。

 

  パリで、頑張って、けなげに生きている人は、すごい、偉いなと,憧れもしていたけれど、片意地はらずに生きていける日本の居心地の良さがわかるようになった。

 物価が上がる、暮らしにくくなる、という声が聞こえてくるが、パリに来てごらんなさい。農業国でありながら、野菜まですごい値上がり。トマトを買うのを躊躇してしまう。10ユーロで野菜がわずかしか買えないのだから。クロワッサンは80セント、日本円で140円もする。庶民のバケットが、なんと200円以上です。昼食に2000円かかるというのはどうか。飲み物をつけると3千円、ごく一般的な店で。

日本は外食天国と言えそう。ガソリンも何もかも、日本はまだ、随分安いということがここに来れば実感できる。