明日は別の日

のんびりと、マイペースでブログを書いて来ましたら、結構長く続いています。元気出して行きまっしょ、というタイトルから、一新するつもりで。

松竹座、花形歌舞伎

 

 

4月の花形歌舞伎は、1枚しか券がなかった。その券は、いつもの二階席と違い、一階の前から3番目の良い席だった。上方の中堅から若手中心の舞台で、3部に別れている。チケット代金は、一番席が8千円なので、歌舞伎としては安く設定されている。人気がないので、招待席にも、前から3番目という席が設けられたのだろう。

 当日になって、松竹座に電話をすると、一番安い席もまだ空いているという。当日券が買えなければ、母を待って、映画館にでも入っていようと思っていたが、母は一席しかないのを憶えていて、行くかどうか思案していた。当日券があると電話で伝えると、母は躊躇なく行くことを決めた。早めに夙川で待ち合わせて、難波についてから、昼食を取った。「くいだおれ」がなくなるので、くいだおれに入ってみようか、と思ったが、母がそれほどお腹が空いていないというので、「くいだおれ」というわけにも行かない。

 「はり重」の小振りの牛丼なら食べられそうだというので、「はり重」のカレーショップの方に入った。レストランの方はいつも閑散としているのに、こちらはいつも、並ぶほどの混みよう。待っていても、済めばすぐに出て行かれるので回転が速い。時間のある時にはレストランに行く。階上の厨房から来る、幕の内などは20分くらいかかるし、牛鍋も時間がかかる。早いのはランチぐらいで、これは、カレーショップと同じ厨房からのもの。スープとコーヒーがついている。ゆっくりと食事を楽しむには、レストランがお勧め。

 

 さて、カレーショップにはいると、母は、牛丼ではなく、ビーフカツカレーを注文した。私は以前に、それと同じ物を食べながら、「隣の人が食べているえびふらいカレーが美味しそうだ。」「ビフカツランチが美味しそうだ。」とキョロキョロ目を走らせていた。ビフカツカレーはやめて、ビフカツランチに決めた。

 注文品が来ると、目の前にある母のビフカツカレーが、いかにも美味しそうに見える。 けれども、家でカレーの仕込み中なのだ。妹が「ミンチでカレーを作ると、美味しい。」と言ったのがひっかかっていて、ハンバーグにするつもりで買ったミンチ肉で、前夜からカレーを煮込み始めていた。これから、毎日カレー日が続くことになる。と言う理由もあって、カレーは食べないことにしたのだ。

 母は、美味しい、美味しいと言いながら、お腹が空いていないはずなのに、ご飯は残したものの、結構しっかり食べている。ここのビフカツカレーは、ボリウム満点なのに。

 

 私は自分のビフカツ定食ですでにお腹が大きいのに、母が食べられないという、最後の一切れに手を出し、カレーもちょっぴり食べて見る。美味しかった。戸口に人が待っている。食べ終わると、すぐに席を立つ。まだ時間があるので、いつものように、水掛不動尊にお参りに行くと、隣の店先に置いている「夫婦善哉」の値段が二倍になっていた。二倍とは、すごい値上がりだ。水掛不動尊へのお参りの人が随分多くなっているので、観光客ならいくらでも買っていく。特にアジアからのお客さん達が増えているので、二倍であろうが、3倍であろうが、関係ないというのだろう。

 

 私が購入した、3階の席から、母の様子がよく分かった。休みになって、席を離れて私を捜しに来るかもしれないと心配したが、席に座ったまま、私を捜しているよう。幕間が10分なので、席を立つ人がなく、そのまま座っていた。

 15分の休憩になると、あわてて一階席に行く。母は「ここは良く見えるから変わってあげよう。どこにいるの。」というので、「私の席も良い席だから大丈夫。芝居が終わったら、ここに座ったまま待っててね。迎えに来るから。」ともう一度念を押して、三階席に。

3階の一番前の席なので、充分良く見えた。パリなどの大劇場と違い、松竹座の3階席からは、顔の表情まで見える。安価で、歌舞伎を堪能するのには、持ってこいの席だ。

 3階の壁に、歴代の歌舞伎役者の肖像写真が並んでいる。これを見るのも初めてだった。今度、母に見せてあげたいと思いながら、一人一人、歌舞伎を継承してきた、名役者の写真を見る。嵐徳三郎さんの写真が端にあった。蜷川芝居の「王女メディア」での演技が蘇る。

 

 私達が見たのは、2時45分からの出し物で、最初が踊りで「業平吾妻鏡」あいかわらず、進の助さんの踊りが不味い。相方の薪車さんは良く踊る。舞踊は、ごまかしが効かない。

 二幕目は、「双蝶々曲輪日記」で3場からなっている。情緒たっぷりの世話物で、上方特有のもの。坂田籐十朗を復活襲名した、お父さんと扇千景の息子達は、二人とも、上方を背負って立つ役者で、実力も充分。特に、翫弱さんは、若い頃から踊りも演技も秀でていて、お父さんとどちらがどちらかわからないほどよく似ている。歌舞伎は、肉体芸の継承を求められるので、基本は押さえながらも、その人にしか出来ない独自性も要求される。超えていかなければ、歌舞伎のおもしろさは持続出来ないし、それぞれのお家芸は、きっちりと継承していかなければならない。関東では、海老蔵や、染五郎、亀次郎など、実力も人気も抜群の役者が多いので、上方は地味で盛り上がりにも欠ける。中村亀鶴という若い役者が、今回の舞台で、主役の濡れ髪というお相撲さんの役を演じて、これがなかなか良かった。これから注目して行きたい役者さんだ。